ご存知の通り、憲法の条文は100条ほどです。
たったこれだけの条文に、国家の指針を示すわけですから、個々の条文が「抽象的」な内容になるのは致し方ありませんね。

そこで、重要になるのが「学説」だったり「判例」であったりします。これらが、問題が生じた際には、「憲法条文ではこのように解釈される」と補足説明してくれているわけです。

ただ、行政書士試験では、「学説」を取り扱った出題はあまり多くはありませんので、必然的に判例の学習が中心になります。(基本テキストもそのように作られています)

憲法の「第21条1項」を例に挙げ、説明してみます。条文は以下の通り。
1.集会.結社及び言論の自由、出版その他一切の表現の自由は、これを補償する。

「表現の自由」を保障している条文ですが、表現の自由とは〇〇と〇〇と・・・などと具体的に定義されているわけではありませんので、「集会、結社及び言論の自由、出版その他一切の表現の自由」が具体的になんであるのかは、解釈の問題となります。

そこで憲法が施行されて以来、この「表現の自由」を巡って、様々な権利が主張されてきました。
下記はその一部です。

・知る権利・・・博多駅テレビフィルム事件(S44.11.26 最判)
・アクセス権・・・サンケイ新聞事件(S62.4.24 最判)
・報道の自由・・・博多駅テレビフィルム事件(S44.11.26 最判)
・取材の自由・・・西山記者事件(S53.5.31 最決)

ただ、行政書士試験において、重要なのは判決ではありません。どちらが勝った負けたではなく、その事件において、最高裁判所がどのような権利を「表現の自由」として保障し、または尊重し、どのような制約を受けると判断したのかが重要なわけです。

最高裁は、博多駅テレビフィルム事件で「報道の自由」と「取材の自由」について以下のような解釈を示しました。
①「報道の自由」は21条で保障される
②「取材の自由」も十分尊重される。
③「取材の自由」に関しては、公正な裁判を実現するというような、憲法上の要請がある場合は、一定
の制約は受ける


この点をしっかり理解すると、点数が取れます。

そして、この問題がどのように問われるかを、過去問で確認します。

2013年試験 問7 肢1
報道機関の取材の自由は憲法21条1項の規定の保障の下にあることはいうまでもないが、この自由は他の国民一般にも平等に保障されるものであり、司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ法廷内でのメモ採取を許可することが許されるかは、それが表現の自由に関わることに鑑みても、法の下の平等との関係で慎重な審査を必要とする。

いかがでしょうか?
この問題の場合、憲法21条1項で保障されているとされたのは、「報道の自由」であり、取材の自由は保障されていないので、間違いということになります。

このように判旨を十分に理解し、それから予想問題であったり、市販の問題集でやりこむことをお勧めします。ちなみに、司法試験短答式や予備試験の問題は、若干傾向がちがいますので、あまりお勧めしません。(私はやりましたが…)

注意:憲法判例は記述で問われることはないので、判旨の確認と問題集を繰り返す程度に、「覚えて」おけば大丈夫です。深入りして、暗記することは避けてください。

むしろ、暗記が必要なのは、「統治」分野の条文です。こちらは、しっかりと覚えることが重要です。

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