こんにちは、行政書士・FPみらい法務事務所の佐藤です。
皆さん、学習は進んでますでしょうか?

新型コロナウイルスの影響がどうなるか、今後も予断は許しませんが、今の状況ですと今年度の行政書士試験は予定通り開催されそうですね。来週も頑張っていきましょう。

ということで、今日は行政法と実務の話です。
20200625_160539210_iOS
※なにか新たな業務を始めるときは、「ばっかり読み」がおススメ

 よく、「行政書士試験の内容は、実務では役に立たない」という声を聞きます。
本当のところはどうなのでしょうか?私の実感としては、それはNOです。

確かに、細かく暗記した憲法条文や判例も、実務では全く使わないかもしれません。
しかし、民法、会社法、行政法や情報通信につきましては、取扱う業務によってかなり必要な知識だと思います。例えば、私が主業務の一つとしている「ドローンの関連法規」を例に考えてみましょう。

ドローン(以下は無人航空機)の規制が盛り込まれた改正法が施行されたのは、2015年12月10日です。(この法律の成り立ちや、規制の背景は、法律を理解する上で非常に重要なのですが、それはまた、いつかの機会に)まず、その改正法成立までの流れを見てみましょう。

①7月14日閣議決定し、衆議院に法案を提出(内閣提出法案)
②8月26日衆議院国交省委員会可決
③8月27日衆議院審議終了(可決)
④8月31日参議院国交省委員会可決
⑤9月4日参議院審議終了(可決成立)
⑥9月11日交付
⑦12月10日施行

この改正法は「ある事件」が原因になったという特殊な背景もありますが、この流れを見て閣議決定から施行までたった5ヶ月しかかかっていないという、ハイスピード改正法だったことが分かります。ここまでは、立法分野ですので、憲法学習を思い出せば、立法過程がどのようなフローになっているのかは分かると思います。

重要なのはここからです。
この、改正法の中で『航空法132条』だけを抜粋して例示してみます。
132条 
何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
1 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域
2 前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空


いかがでしょう?これだけでも、行政法で学んだ知識がかなり問われます。

この条文を解説すると
「何人も、①国土交通省令で定めた航空機の航行の邪魔になるような場所や人や家屋が密集している地域では、ドローンを飛ばしてはダメです。ただし、②国土交通大臣の許可を受ければ、飛ばしていいですよ。」となります。

①は、法律の委任を受けて制定する「委任命令」ですよね。こちらは行政立法で学びます。
②は、一般的に禁止して、国土交通大臣の許しがあればOK。「講学上の許可」にあたります。

また、この改正法を132条の許可にあたっては、申請書を提出するように「航空法施行規則」が定められております。

第136条の3 
第132条ただし書の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。


更に、この航空法施行規則の一部を改正する省令を定める際に、2015年9月16日から11月17日まで「パブリックコメント」が実施されました。このパブリックコメントでは、622件の意見が集まり、その意見を踏まえて、当初の審査要領が修正されております。こちらの手続きは、行政手続法「命令等を定める手続き」に則って行われております。

ここで定められた「審査要領」は、許可にあたっての審査基準を定める、「行政規則」にあたりますよね。

ほかにも、この「審査要領」は、行政手続の一般法である行政手続法」に則り、許可承認の審査手続きが決められております。また、仮に申請が不許可であった場合は、申請に対する不許可を不服として「審査請求」を行うことができます。

更に、その許可には「航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全に影響を及ぼすような重要な事情の変化があった場合は、許可等を取り消し、又は新たに条件を付すことがある」など附款」が付加されております。

いかがでしょうか?どれも、皆さんが現在学習されている行政法の内容そのものですよね。

我々、許認可を生業としている行政書士は、クライアント代理人となって行政より許可をもうことが仕事です。そのためには、根拠法令はもとより、その施行令、政令、省令だけでなく、訓練や通達まで幅広く目を通し、行政側が間違った処分を下すようならば、それを正していくことも我々の責務です。

たしかに営業テクニックは大事です。集客できなければ食えません。
ただ、あまりにマーケティングに注力し、許可マニュアルだけを読む行政書士というのは、いかがなものでしょうか?

今日の話の結論は、みなさんの試験勉強も無駄にはならないとううことです。

では、また来週。

(本日のおススメ書籍)